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福岡家庭裁判所小倉支部 昭和43年(家)699号 審判 1968年8月15日

申立人 田中マサエ(仮名)

事件本人 川田梅子(仮名) 昭二四・六・一四生

外一名

主文

事件本人川田梅子、同川田数子の親権者を本籍福岡県鞍手郡○○町大字○○△△△△番地亡川田明から、申立人田中マサエに変更する。

理由

本件申立の理由は、申立人は亡川田明と昭和三三年四月一日協議離婚するに当つて長女梅子、二女数子の親権者を父である亡川田明と三女幸子の親権者を母である申立人と定め、申立人は今日まで三女幸子を養育している。一方事件本人梅子同数子は一時父である亡川田明の許で養育されていたが、同人は事件本人両名を同人の母(事件本人等の父方祖母)の許に預け所在不明となつた。その後同女は再婚し事件本人両名は田川児童相談所から施設に収容された。申立人はこの事情を知つたので昭和三四年一一月頃事件本人両名を引き取り養育監護にあたつて来た。ところが最近になつて亡川田明は昭和四〇年二月二二日死亡している事実が判明した。ところで事件本人両名には後見人の指定もなく後見人の選任もない。そこで事件本人両名の親権者を実母である申立人に変更されたく本申立に及んだというにある。

よつて按ずるに戸籍謄本、調査官馬田幸芳の調査報告書、川田数子の書面照会に対する回答書によれば上記主張の如き事実が認められる。さて離婚により未成年者の単独親権者となつた者が死亡した場合は後見が開始し、もはや親権者変更の余地はないとする考え方もあるが生存せる他方の父又は母と未成年者とが没交渉である場合は格別、本件における如く九年間にもわたつて未成年者を養育監護し母と子として共同生活を送つているが如き場合に未成年者のため後見人を選任することはむしろ国民感情に照し不自然というべく民法八一九条六項の類推適用あるものと解する。

申立人は昭和三五年七月より長浜武夫と内縁関係にあつたが同三七年二月同人が死亡したので、現在事件本人梅子、三女幸子および長浜との間の子由次と肩書地に居住して仲居をしている(事件本人数子は申立人の了解の許に肩書地において丹沢武春と内縁の共同生活をしている。)もので親権者として適当であつて事件本人等の利益にも合致すると考えられるので主文のとおり審判する。

(家事審判官 菅納一郎)

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